ザンギュラ

一人だけ遅れちまったよ…。いや、ゴジラがね…。別にいいんだけどさ。

さて、作品の話を。短編集ということで、それぞれの話には関係は無いわけですが、いずれも怪談、伝記などがベースになっています。どの話もかなり重苦しい雰囲気の恐い話なので、正直読後の後味はあまりよくありません。とはいえ、話の構成が単純なのにもかかわらず、極めて高い恐怖を演出しているところはさすがですね。その恐怖自体は話の簡潔さに比べて非常に複雑で、その恐怖が一体何から起こるのか、また、感じた恐怖自体が幻だったのではなかったのか、といった、作品中の登場人物が受けている印象を、そのまま読者にも与えています。
恐怖についてもう少し。よく読んでみると、この短編集の中のほとんどの話でその恐怖が完結していない点が分かると思います。話自体は既に完結しているというのに、その恐怖の要因だけは何らかの形で残されているのです。トラウマや物理的被害、嫌な予感…。おそらく後味の悪さはここからきていると思いますが、それを補って余りあるほど、この恐怖は作品に奥行きを与えています。そういった恐怖を作品に、そして読者にも残せるほど、作者は繊細に、丁寧に描いているのでしょう。作品の完成度は、極めて高いといえるでしょう。

ゴジラ、面白かったよ。みんなも、観てみれば…。