not simple (IKKIコミックス)

not simple (IKKIコミックス)


リストランテ・パラディーゾやLA・QUINTA CAMERAの復刊に続いて、COMIC SEED!の連載分に172の未収録分をプラスした新作が今回の作品。早速買いました・・・というのは嘘です。たまたま手にとっただけです。


そういえば、昨年の白門祭号に当たるGUMI7号の原稿のときにNANAを読んだときのことを思い起こすと、not simpleとNANAって非常に良く似た作品だと思う。どちらも、最初にオチが見せることで、(NANAの場合はかすかに匂わすのみではあるが)ハッピーエンドをあまり感じさせない工夫をするだけではなく、主人公の出生が複雑な点や主人公のそばにいる人物寄りの視点で話が進んでいく。ただ、正反対なのは矢沢が言葉を多く使って表現したのに対し、オノは表情で表現しているところではないだろうか。漫画における言語量は、多ければ多いほど絵を見なくなる。言葉と絵で表現するときには、言葉の情報量よりも絵の情報量の方がずっと多いのだから仕方ないのかもしれないけれど、言葉がどうしても軽率になる。だから、ついたくさん言葉を使ったりするし、絵を見るよりもそのほうがラクだから受け入れられやすい。だけど、分かりやすい、簡単な作品は果たして後世まで読み続けてもらえるのか。言葉では伝達しきれないメッセージそのものを分析することはnot simpleでありとても骨の折れる行為であるものの、complexではない。分析を行うことでその作品をより好きになった経験は漫画読みなら一度ぐらいはあるに違いない。そういうことが結局長く愛される理由だということをオノはよくわかっていると思う。流石オノ、といわせる一作。


余談ですけど、オノ・ナツメのHPでマンガが読める。お試しあれ。