トゥルー・カラーズ (Cue comics)

トゥルー・カラーズ (Cue comics)

今回紹介する本はこれ。初出は96年ですが買ったのは最近なんで紹介します。
さそうあきらと言えば有名なのは『神童』。そしてある意味有名な問題作『コドモのコドモ』。他、『トトの世界』『マエストロ』など、独自の視点や発想が光る作品が多いです。また作中には数多くの風刺が散りばめられ、それを探りながら読んでいくのもまた楽しみの一つと言えます。しかし絵はお世辞にも上手くはなく、淡々としているので好みが分かれる所でしょう。
さて、この『TRUE COLORS』ですが、34の色それぞれをモチーフにした漫画を載せた短編集となっています。当然オールカラー。扱われている色はメジャーな赤・青・緑などではなく、卯花色・亜麻色・洗朱・黄梔子・萌黄色などスカした感じの色ばかり。知らないっつうの。まぁだからこそ「へーこんな色なんだー」って楽しみ方はできますが。作者は、“「トゥルー・カラーズ」の話の中に出てくる色たちは、ほとんどが再現のむつかしい、「質感のある」色ばかりです。読みながら、そのようなことを感じていただけるとうれしいです。”(あとがきより)と言ってるので、より質感を伝えやすいようにこのような(細かく分けられた)色を使っていると好意的に解釈することはできますが、やっぱりスカしてる感は否めない。
前述したように、このさそうあきらという漫画家は絵は下手な部類に入ります。動きはないし表情も淡々としている。しかしその発想は独自的で、それが絵の下手さを補って余りある魅力となっています。今回も試み自体はかなり面白い。色というのはかなり原始的な視覚記号で、感情にも密接に作用します。音楽を聴く時も色のイメージを伴うことは非常に多い。そんな色をどうやって漫画で表現したのか…かなりの期待を持って買ったのだけどこれが拍子抜け。その色を使ってるだけ、という感じでした。もっとその色が持つイメージを意識した話を描いて欲しかった。山葵(ワサビ)色でワサビが出てくるとかそのまんま過ぎ。話自体も取り立てて面白くないし、しかも作者だけが面白いと思ってそうなのが何かなぁ。質感を伝えたいならもっと工夫して下さい。最近の作品を見ても画力が上がってるとは思えないし、もうあれはあれで完成してしまってるんでしょうか。まぁ何だかんだ言っても読んじゃうんですが。
で、やっぱり試み自体は面白いから何かに応用できないかと考えるわけです。色のイメージで漫画を分けてみたりとか。