21号 講談社

日向武史あひるの空
最近では珍しくなったバスケスポ根モノ。先の新連載攻勢の中では「餓狼伝」の次に成功してる気がします。マガジンのヤンキー臭さとバスケがいい配合具合だけど、「空がひたすら頑張る→ヤンキーがついてくる」という図式は少し物足りない。「バスケをがんばる」以前に、バスケ部の基盤を作るという準備段階で学校との交渉があったりするわけで、そこをもっとキチンと書くといいかも。今回も「校長との交渉」という場面は説明だけで終わってるし。そこは残念。「健全スポーツとヤンキーで健康な中学生を育成する」という点では良作。
森川ジョージ「はじめの一歩」
ベテラン・武戦に入ってからグッとおもしろくなった一歩。一歩と武がお互いギリギリの線で闘っているという描写が非常に的確です。武の「策士」という一面ばかりではなく、その底にある勇気と決断力にまで焦点をあてているのもソツがない。武みたいな敵が出てくると改めて「どう闘うか」という面が浮上してきます。スポーツだって頭がよくないと勝てません。
作・安藤夕馬 漫画・朝其まさし「クニミツの政
これはー、どうなんだろう。有機農法でソバを作っていた爺さんのところに息子が帰ってきて、それがシステム化した農場経営を進めるために農薬を散布しようとするという展開に。農薬ねー、当然農薬は悪者になってしまうわけですが、これには「効率的農場経営を余儀なくさせるような消費体型」の問題もからんでいると思うのですが、そっちにはまるで言及ナシ。もっと多様な観点から・・・とか言うと変な役人みたいなので止めます。
瀬尾公治「涼風」
これは一点だけ。「髪の水玉」という表現技法はいつのまに市民権を得たのでしょうか。エイケンより前にあったっけ?あと、制服がありえないくらいエロい。おいおいおい、セーラー戦士ですか。
加瀬あつしジゴロ次五郎
すいません、毎回ちょっと楽しみです。僕が小学生のころからず――――っと変わらず、超くだらないシモネタダジャレを生産し続ける加瀬先生は一種の天才だと思います。万光年。
原作・夢枕獏 漫画・板垣恵介餓狼伝BOY
今週はチャンピオンでもマガジンでも板垣先生の作品が読める奇跡の週。タンバの強さは「嘘」だった。しかしそれを見抜いていた木戸が、それでもなおタンバに魅かれる理由とは?(肉体の)戦いに身をおかない木戸という視点を入れたのはこういう展開の為か。上質なストーリーテリングとマガジンイズムを飲み込むほどの「板垣イズム」に徹した演出(絵自体がすでに演出)が毎回超楽しみ。マガジン内で今最も注目すべき作品かもしれません。実力がある作家はどこで描いても見劣りしない。
原作・夏原武 漫画・刃森尊伝説の頭・翔」
また唐突にヤンキーが出てきて唐突にからまれる。すごくビックリしたのが「我がグランドクロスをよろしくお願いします(頭下げる)」→3ページ後、頭突き→「誰がてめぇなんかに頭下げるかゲス野郎が!!」待て、今頭下げてたから。
宗田郷「天才料理少年 味の介」
「今人気№1セクシーアイドル 春風理菜ちゃん!!」という唐突すぎるキャラ登場で先週から引っ張った味の介。作画、ストーリー、あらゆる面で「描けてない」感が否めない。料理の説明に半ページしか使わず、天堂の意味不明の怒り顔に半ページ使う意図がわからん。そして理菜のオパイの匂いをかいで「百舌の舌」発動と思いきや「過去を見る」という新たな能力が発動。どうなってんだこれ。
総評
漫画はネタばっかりじゃありません。良作は良作で、きちんと読めばおもしろい作品も多いはずです。この信頼を根こそぎ奪う作品が今のマガジンには多すぎる。良作もあるけど、その勢いを削ぐほどに。作品そのものだけではなく編集もおかしい。今回は触れませんでしたが「フタツキ!」が打ち切られそうだし「フードハンター」も味の介より下に掲載されています。上質でもイマイチパッとしない作品よりはド下手でネタになる漫画のほうが需要があるとしたら、相当嫌な話しです。作り手はもっと「愛」と「情熱」を見せて欲しい。(班長肉彦)