han-cho2006-12-09

作品:メトロ・サヴァイブ
作者:藤澤勇希
出版社:秋田書店
掲載誌:プレイコミック
連載期間:2006年2月〜2006年9月
冊数:1冊(第2巻,2007年発売予定)


自然災害(地震)とそれに巻き込まれた人々が織り成すパニックホラーもの。
人間、誰しも自然への畏怖と共に
自然災害への憧れや期待といった感情(震度3,4程の地震に怖がりながらもワクワクしちゃう)を
持つ生物だからだろうか、こういったパニックものは万来好まれるジャンルではある。
ただ、フィクションであるが故の性か、やれ未知の伝染病だの、政府の陰謀だの、井戸に毒を入れただの
一気に自然とかけ離れた現象が出現し、ある種の失望を抱かせる作品が少なくない。
それと同時にやれ海上保安隊だの、救助災害のプロだの、地質学者だのが
ヒーロー的活躍をして、観客を盛り上げようとすることも多々ある。
フィクションであるから、それらを利用して
物語を作り上げることは大いに許可されているだろうし
効果的であることは認めつつも
そんなんじゃやっぱり僕らのような平凡凡庸一般市民が遭遇する自然災害とは違うじゃんか、と
ヴァーチャルリアリティを追求する僕なんかは感じてしまうわけである。
その意味において、メトロ・サヴァイブはリアルだ。
東京で大地震が起き、地下鉄に閉じ込められたフツーの日本人10名が脱出を試みようとするのだが
その描写には先述した無駄がない。
老若男女があれこれ知恵を絞って
少しずつ出口らしきものに近づいては挫折を繰り返すだけである。
そもそも、彼等は外の状況なんて全く分からないのだし
たまたま電車に乗り合わせた人間に救助のプロなどいるはずもない。
だから、地上の状況を読者に教える必要など全くないのだし
当然、ストレスで不平不満をボヤいたり、怒り叫びだすキャラも出てくる。
性欲もあるし、食欲もある。
ほとんど全てのキャラが醜いまでに生きようとする。
極限状態下に作り上げられた"正常な社会現象"を徹底的に暴き出した
これぞパニックホラーといった作品。